TBM-KY(危険予知活動)の進め方:実施手順と記録の書き方
TBM-KY(ツールボックスミーティング・危険予知活動)の4ラウンド法による実施手順、KY活動表の記入例、危険予知テーマ一覧、マンネリ化を防ぐ工夫まで建設現場で使える実践ガイドです。
この記事のポイント
- TBM-KYは作業開始前のミーティング(TBM)と危険予知活動(KY)を組み合わせた安全活動
- 4ラウンド法で現状把握→本質追究→対策樹立→目標設定の順に進める
- KY活動表には日付・作業内容・危険要因・対策・行動目標を記録する
- マンネリ化防止には進行役ローテーション・ヒヤリハット活用・振り返りKYが有効
TBM-KY(ツールボックスミーティング・危険予知活動)は、建設現場で毎朝行われる安全活動の基本です。形骸化させずに実効性のある活動にするために、正しい進め方と記録の書き方を理解しておく必要があります。本記事では、TBM-KYの4ラウンド法による実施手順からKY活動表の記入例まで解説します。
TBM-KYとは何か
TBM(ツールボックスミーティング)
TBMとは「Tool Box Meeting(ツールボックスミーティング)」の略で、作業開始前に現場で行う短時間のミーティングです。名称の由来は、かつて作業員が工具箱(ツールボックス)の周りに集まって打ち合わせをしていたことに由来します。
TBMでは主に以下の内容を確認します。
- 当日の作業内容と作業手順
- 作業範囲と他職種との取り合い
- 使用する機械・工具・資材
- 安全上の注意事項
- 体調確認
KY(危険予知活動)
KYとは「危険予知(Kiken Yochi)」の略で、作業に潜む危険を事前に予測し、対策を立てる活動です。労働安全衛生法に基づく安全衛生教育の一環として位置づけられています。
TBMとKYを組み合わせた「TBM-KY」は、建設現場で毎朝の朝礼後に各作業班単位で実施されるのが一般的です。所要時間は10〜15分程度が目安です。
ポイント
4ラウンド法(4R-KY)の実施手順
KY活動の標準的な進め方として「4ラウンド法(4R-KY)」があります。4つのステップに沿って危険を洗い出し、対策を決定します。
第1ラウンド:現状把握(どんな危険がひそんでいるか)
当日の作業内容に潜む危険要因を、参加者全員で洗い出します。
- 当日の作業のイラストや写真を使って、危険なポイントを指摘する
- 「○○なので、○○して、○○になる」という形式で危険を表現する
- 批判や否定はせず、できるだけ多くの意見を出す(ブレインストーミング方式)
例:「足場上で鉄筋を運搬するので、つまずいて墜落する」
第2ラウンド:本質追究(これが危険のポイントだ)
第1ラウンドで出された危険要因の中から、特に重要なものを絞り込みます。
- 発生頻度と重篤度の両面から危険度を評価する
- 参加者の合意のもと、重点的に対策すべき項目を選定する
- 選定した項目にアンダーラインや丸印をつける
第3ラウンド:対策樹立(あなたならどうする)
第2ラウンドで絞り込んだ危険に対して、具体的な対策を検討します。
- 「○○する」という行動目標の形で対策を表現する
- 実行可能な具体的な対策にする
- 設備的対策(ハード面)と作業方法の改善(ソフト面)の両方を検討する
例:「足場上での運搬時は安全帯を使用し、一度に運ぶ量を制限する」
第4ラウンド:目標設定(私たちはこうする)
チーム全員で実行する行動目標を決定し、指差し呼称で確認します。
- 対策の中から「チーム行動目標」を1〜2項目に絞る
- 全員で指差し呼称を行い、目標を確認する
- 「○○よし!」と全員で唱和する
注意
KY活動表の記入方法
KY活動表の構成
KY活動表(KYシート)は、TBM-KYの実施記録として作成します。標準的なKY活動表には以下の項目があります。
- 日付・天候
- 工事名称・作業場所
- 作業班名(職長名)
- 参加者の氏名
- 当日の作業内容
- 第1R〜第4Rの記録(危険要因、対策、行動目標)
- 指差し呼称の実施確認
記入例
以下に、建築工事における記入例を示します。
日付:2026年2月21日(土)晴れ
作業内容:3階スラブ型枠の組立て作業
第1ラウンド(現状把握)
- 型枠材を持ち上げる際に、腰を痛める
- 開口部付近で作業中に、足を踏み外して墜落する
- 型枠を支える支保工が不安定で、倒壊する
- 釘打ち作業中に、釘が飛んで目に入る
第2ラウンド(本質追究)
- 重要項目:「2. 開口部付近で作業中に、足を踏み外して墜落する」を最重要危険として選定
第3ラウンド(対策樹立)
- 開口部に手すりと覆い蓋を設置する
- 開口部周辺ではフルハーネス型安全帯を使用する
- 開口部の位置を表示し、注意喚起の看板を設置する
第4ラウンド(目標設定)
- チーム行動目標:「開口部付近ではフルハーネス型安全帯を必ず使用しよう、ヨシ!」
ポイント
建設現場の危険予知テーマ一覧
KY活動で取り上げるテーマは、当日の作業内容に応じて適切に選ぶ必要があります。以下は建設現場でよく使われる危険予知テーマの一覧です。日替わりでテーマを変えることで、マンネリ化の防止にもつながります。
墜落・転落
足場作業、屋根上作業、開口部付近の作業など、高所作業全般に関わるテーマです。建設業の労働災害で最も多い事故類型であり、KY活動で最優先に取り上げるべきテーマです。安全帯(フルハーネス)の使用、手すり・幅木の設置状況、昇降設備の確認などを重点的に話し合います。
飛来・落下
上階からの資材や工具の落下、クレーン吊り荷の落下に関するテーマです。上下作業の有無を確認し、立入禁止区画の設定や防網の設置、玉掛け方法の確認などを話し合います。
重機との接触・挟まれ・巻き込まれ
バックホウ、ローラー、クレーンなどの建設重機との接触事故に関するテーマです。重機の作業範囲と歩行者の動線、誘導員の配置、合図の方法などを確認します。安全パトロールでも重点的にチェックされる項目です。
感電
電気工事、仮設電気設備の近くでの作業、雨天時の作業に関するテーマです。充電部の防護、漏電遮断器の設置、濡れた手での作業禁止などを確認します。
熱中症
夏季の屋外作業で特に重要なテーマです。水分・塩分の補給、休憩時間の確保、WBGT値の確認、体調不良者の早期発見などを話し合います。
酸欠・有害ガス
マンホール、ピット、地下室など換気の悪い場所での作業に関するテーマです。酸素濃度・硫化水素濃度の測定、換気装置の設置、緊急時の救出方法などを確認します。
崩壊・倒壊
掘削面の崩壊、型枠支保工の倒壊、資材の荷崩れに関するテーマです。地山の状態確認、土留めの設置、資材の積み方などを話し合います。
切れ・こすれ
丸のこ、グラインダー、カッターなどの切断工具使用時のテーマです。保護具(保護メガネ・手袋)の着用、工具の点検、正しい使用方法の確認を行います。
ポイント
マンネリ化を防ぐ工夫
TBM-KYは毎日実施するため、どうしてもマンネリ化しやすい活動です。形骸化を防ぎ、実効性を維持するための工夫を紹介します。
進行役のローテーション
KY活動の進行役(リーダー)を固定せず、作業員が交替で担当します。進行役を務めることで当事者意識が高まり、積極的な参加を促せます。
ヒヤリハット事例の活用
過去に現場で発生したヒヤリハット(事故には至らなかったが危険だった事例)を題材にすると、より実感のこもった議論ができます。自社や他社の事故事例を定期的に共有することも効果的です。
イラストや写真の活用
当日の作業場所の写真や危険箇所を示したイラストを使うと、参加者が具体的にイメージしやすくなります。元請が用意する場合もありますが、職長自身がスマートフォンで撮影した写真を使うのも有効です。
1日の振り返り(反省KY)
作業終了時に短時間の振り返りを行い、KY活動で挙げた対策が実行できたかを確認します。「今日はここが危なかった」という実体験を翌日のKY活動に反映させることで、活動の精度が上がります。
TBM-KYと法的根拠
労働安全衛生法上の位置づけ
TBM-KY自体を直接義務付ける法律の条文はありませんが、労働安全衛生法第28条の2に基づく「危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)」の簡易版として位置づけられています。
また、元請業者が行う「店社安全衛生管理」や「統括安全衛生管理」の中で、各作業班でのKY活動の実施を求めるのが一般的です。元請の安全衛生管理計画書に「毎朝のTBM-KYの実施」が明記されている場合、下請業者にはその実施義務があります。
職長教育との関連
労働安全衛生法第60条に基づく「職長等の教育(職長教育)」では、KY活動の実施方法が教育カリキュラムに含まれています。職長教育を修了した職長がTBM-KYの進行役を務めるのが望ましい体制です。なお、新たに現場に入場する作業員に対しては新規入場者教育の実施も必要です。
ポイント
TBM-KYの記録管理
KY活動表の作成・保管は、安全管理体制の一環として重要です。元請への提出が必要な場合も多く、記録の管理が煩雑になりがちです。
特に複数の現場を同時に進行している場合、KY活動表の回収・整理・保管には相当の手間がかかります。KY活動表を含む安全書類の種類と作成方法の基本を理解した上で、作成・管理業務はBPOサービスを活用して効率化することで、職長や現場監督が安全管理の本質的な業務に集中できる環境を整えられます。