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建設業の法定福利費とは?内訳の計算方法と見積書への明示ルール

建設業の法定福利費は何パーセント?事業主負担率の合計は労務費の約16〜17%が目安です。健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険・子育て拠出金の5種類の料率と計算例、月額給与30万円のシミュレーション、国交省通知に基づく見積書への内訳明示方法まで分かりやすく解説します。

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#法定福利費#社会保険#見積書#内訳明示

この記事のポイント

  • 法定福利費は健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険・子育て拠出金の5種類
  • 事業主負担率の合計は労務費に対して約16〜17%が目安となる
  • 国交省通知により見積書への法定福利費の内訳明示が強く求められている
  • 一人親方は雇用関係がないため事業主負担の法定福利費は発生しない

建設業において、法定福利費の適正な計上と見積書への内訳明示は、社会保険の加入促進とダンピング防止の観点から重要な取り組みです。本記事では法定福利費の構成要素、具体的な計算方法、見積書への記載ルールを解説します。

法定福利費とは何か

法定福利費とは、法律で事業主に負担が義務付けられている社会保険料等の費用のことです。具体的には以下の5つの保険料の事業主負担分を指します。

  • 健康保険料(健康保険法)
  • 厚生年金保険料(厚生年金保険法)
  • 雇用保険料(雇用保険法)
  • 労災保険料(労働者災害補償保険法)
  • 子ども・子育て拠出金(子ども・子育て支援法)

法定福利費は工事原価の一部であり、労務費に付随して発生する費用です。建設業の見積・積算において正確に計上すべき項目です。従来、建設業では法定福利費が見積書に明示されないまま受発注が行われるケースが多く、結果として下請業者が適正に社会保険料を負担できない状況がありました。

ポイント

法定福利費は「法律で定められた福利厚生費」の略です。会社が任意で提供する住宅手当や慶弔見舞金などの「福利厚生費」とは異なります。

各保険料の料率と事業主負担

健康保険料

健康保険料は、標準報酬月額に保険料率を乗じて計算します。事業主と労働者が折半で負担します。

  • 協会けんぽの場合:都道府県ごとに料率が異なる(2025年度は9.33%〜10.42%の範囲)
  • 建設国保の場合:組合ごとに料率や定額が設定される
  • 事業主負担割合:50%(折半)

厚生年金保険料

厚生年金保険料は、標準報酬月額に保険料率を乗じて計算します。

  • 保険料率:18.300%(2017年9月に引上げが完了し、以後固定)
  • 事業主負担割合:50%(折半)

雇用保険料

雇用保険料は、賃金総額に保険料率を乗じて計算します。建設業は一般の業種より料率が高く設定されています。

  • 保険料率(建設業):17.5/1000(2025年度)
  • うち事業主負担:11/1000
  • うち労働者負担:6.5/1000

注意

雇用保険料率は年度ごとに変動します。見積作成時は、その年度の料率を確認してください。厚生労働省のウェブサイトで最新の料率が公表されています。

労災保険料

労災保険料は、賃金総額に保険料率を乗じて計算します。全額が事業主負担です。

労災保険料率は業種の細分類ごとに異なります。建設業の主な料率は以下のとおりです。

  • 水力発電施設等新設事業:34/1000
  • トンネル新設事業:34/1000
  • 建築事業(既設建築物設備工事業を除く):9.5/1000
  • 既設建築物設備工事業:12/1000
  • 機械装置の組立て又は据付けの事業:6.5/1000

ポイント

建設業の労災保険は、元請業者が一括して加入する「有期事業の一括」が原則です。したがって、下請業者が労災保険料を直接負担するのではなく、元請の工事費に含めて処理されます。ただし、見積書上の法定福利費としては下請業者の労務費に対する料率で計算します。

子ども・子育て拠出金

  • 拠出率:3.6/1000(2025年度も据え置き)
  • 全額事業主負担

法定福利費の具体的な計算方法

法定福利費は、以下の計算式で算出します。

法定福利費 = 労務費 × 法定福利費率

法定福利費率の計算例(2025年度・東京都・協会けんぽ・建築事業の場合)を示します。

保険の種類料率事業主負担率
健康保険9.91%4.955%
厚生年金18.300%9.150%
雇用保険17.5/100011/1000(1.1%)
労災保険9.5/10009.5/1000(0.95%)
子ども・子育て拠出金3.6/10003.6/1000(0.36%)
合計約16.515%

計算例

労務費が500万円の工事の場合:

法定福利費 = 500万円 × 16.515% = 約82.6万円

注意

上記はあくまで概算の計算例です。実際の料率は、加入する健康保険の種類(協会けんぽか組合健保か)、事業所の所在地、労災保険の業種区分、メリット制の適用状況などにより異なります。正確な見積には自社の実際の料率を使用してください。

【シミュレーション】月額給与30万円の法定福利費はいくら?

「法定福利費は何パーセントで、実際にいくらかかるのか」を具体的にイメージするため、月額給与30万円の労働者1人あたりの法定福利費を上記の料率(2025年度・東京都・協会けんぽ・建築事業)で計算してみましょう。

保険の種類事業主負担率月額負担額
健康保険4.955%14,865円
厚生年金9.150%27,450円
雇用保険1.1%3,300円
労災保険0.95%2,850円
子ども・子育て拠出金0.36%1,080円
合計約16.515%約49,545円

月額給与30万円の労働者1人あたり、事業主は毎月約49,500円の法定福利費を負担する計算になります。年間では約594,000円です。

仮に同条件の労働者が5人いる現場であれば、月額約247,700円、年間では約297万円の法定福利費が発生します。この金額を見積書に適正に反映しなければ、事業者が社会保険料を自腹で負担することになり、経営を圧迫する大きな要因となります。

ポイント

上記のシミュレーションは概算です。健康保険料率は都道府県によって異なり、労災保険料率も工事の種類で変わります。自社の正確な負担額を知りたい場合は、加入している保険の料率を確認して同じ計算式で算出してください。

見積書への内訳明示ルール

国土交通省通知の内容

国土交通省は、2013年から「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」において、下請企業が法定福利費を適正に確保できるよう、見積書への法定福利費の内訳明示を推進しています。

2017年7月には、「法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順」が改訂され、すべての建設工事において法定福利費を内訳明示する取り組みが求められています。

見積書の記載方法

法定福利費を内訳明示した見積書の標準的な記載方法は以下のとおりです。

  1. 見積書の末尾(工事価格の下)に法定福利費の内訳欄を設ける
  2. 各保険の種類ごとに金額を記載する
  3. 法定福利費の合計額を明示する

記載例のイメージは以下のとおりです。

  • 工事価格(労務費含む):○○○円
  • 法定福利費(健康保険):○○円
  • 法定福利費(厚生年金保険):○○円
  • 法定福利費(雇用保険):○○円
  • 法定福利費(合計):○○円
  • 見積合計額:○○○円

ポイント

国土交通省と建設業団体が作成した「法定福利費を内訳明示した見積書」の標準書式は、国土交通省のウェブサイトからダウンロードできます。自社の見積書に取り入れる際の参考にしてください。

元請業者の対応義務

建設業法第20条の2では、元請業者は下請業者から法定福利費を内訳明示した見積書を受け取った場合、法定福利費相当額を不当に削減してはならないとされています。

また、国土交通省のガイドラインでは、元請業者に対して以下の対応が求められています。

  • 法定福利費を含む適正な価格での契約締結
  • 下請業者からの法定福利費の内訳明示を求めること
  • 法定福利費を削減するよう求めないこと

注意

法定福利費を一方的に削減する行為は、建設業法第19条の3に規定する「不当に低い請負代金の禁止」に抵触する可能性があります。違反した場合、国土交通大臣または都道府県知事から勧告・公表の対象となることがあります。

法定福利費に関するよくある疑問

一人親方の場合はどうなるか

一人親方は雇用関係がないため、法定福利費の計上方法が異なります。一人親方が労災保険の特別加入をしている場合、その保険料は一人親方自身が負担するため、見積書上の法定福利費には含めません。

ただし、一人親方が国民健康保険や国民年金に加入している場合、その費用を見積金額に反映させること自体は可能です。元請との契約条件によります。なお、一人親方との取引ではインボイス制度への対応も重要な検討事項です。

法定福利費を計上しないとどうなるか

法定福利費を計上しないこと自体に直接の罰則はありませんが、以下のリスクがあります。

  • 社会保険料を適正に負担できず、未加入の状態が続く
  • 建設業許可の更新時に社会保険の加入状況が審査される
  • 元請から現場入場を拒否される可能性がある
  • 経営事項審査(経審)の評点に影響する
  • インボイス制度における仕入税額控除にも関連する

法定福利費の計算や見積書への記載は、正確な料率の把握と計算が必要な作業です。当社では、見積書の作成代行や社会保険関連の書類整備を含め、建設業の事務作業を幅広くサポートしています。

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